Chopin's Music & Stories by Kayo

„ソナタ – 時と形式”

形式美を追求した古典派を経て、個人的な感情や思想の表現を重視し始めたロマン派の時期に、ショパンは230余曲を残しました。ピアノ協奏曲とトリオ、そしてソナタ第1番を音楽学校の作曲科の生徒であった17~20歳に書き上げました。古典派で追求された楽式の中でとりわけ重要視され、作曲家としての課題ともいえるソナタ形式のこれらの作品をワルシャワでの学生時代に意欲的に作曲したことは、ピアニストとしてよりも作曲家として認められたいという自負心の現れであるような気がします。

 

有名な葬送行進曲を3楽章に入れたソナタ第2番はジョルジュ・サンドと交際を始めて間もない29歳ごろに書きました。第3番は体調は優れないながらも精神的に充実した生活を送っていた34歳ごろに、4曲目のソナタはサンドとの関係も翳りが見え始めた36歳ごろに作曲されました。最初の3曲はピアノのソロ曲ですが、最後のソナタはチェロとピアノの二重奏曲です。

 

ショパンの作品のうち半数近くは舞踊曲で、その他は練習曲や前奏曲、ノクターンやバラード、スケルツォなど大まかに分類されています。即興演奏を得意としたショパンは、次第に独自の作風を築き上げていきました。しかし学生時代だけでなく、作曲家としての活動が軌道に乗り始めた時期とさらに晩年の成熟期にも、基本に戻るかのようにソナタを作曲しました。最後のソナタは何度も何度も書き直し苦しんだ末、完成させました。そしてこれがショパンの生前に出版された最後の作品となりました。

 

ショパンの作品の中にはメロディーの中のある一音にアクセントをつけて時計の鐘の音のように繰り返す手法がたびたび見られます。それはまるで時の刻みを思い出させるようです。どんなに楽しいことも悲しいことも辛いことも時の流れの中にある。型にはまらずに自由奔放に過ごしているつもりでも人生の時間は限られている。とはいえ制約された時間や環境の中でも、常に試行錯誤を繰り返して美しさを求めていけば人生は満たされる。そんなことをショパンは教えてくれているような気がします。

 

 

2018年夏

西水佳代

 

 

 
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