Chopin's Music & Stories by Kayo

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24の前奏曲‐イマジネーションの世界

„Chopin’s music & stories by Kayo ”第2弾。このアルバムにはピアノをこよなく愛したショパンが音の絵の具で描いたさまざまな絵画の世界が広がります。24全調で書かれた前奏曲はそれぞれ短い中にショパンのエッセンスが凝縮されたような個性あふれる作品ですが、全体の調和が保たれ24曲一気に聴き入ってしまう魅力的な曲集です。

                   フリデリク・ショパン~24の前奏曲集 作品28
                                     1.ハ長調
                                     2.イ短調
                                     3.ト長調
                                     4.ホ短調
                                     5.ニ長調
                                     6.ロ短調
                                     7.イ長調
                                     8.嬰へ短調
                                     9.ホ長調
                                    10.嬰ハ短調
                                    11.ロ長調
                                    12.嬰ト短調
                                    13.嬰へ長調
                                    14.変ホ短調
                                    15.変ニ長調
                                    16.変ロ短調
                                    17.変イ長調
                                    18.へ短調
                                    19.変ホ長調
                                    20.ハ短調
                                    21.変ロ長調
                                    22.ト短調
                                    23.ヘ長調
                                    24.ニ短調

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ピアノの詩人といわれるショパン。クラシック音楽の中では最も有名な作曲家の一人です。ただ、彼の作品はほかの大作曲家とはまったく違う特徴があります。それは彼の作曲した230余曲のすべてにピアノが使われており、その大部分がピアノのソロ曲だ1)ということです。

当時、オペラを作曲しないと大作曲家とは認められないという風潮が強く、ショパンの尊敬する恩師や家族友人知人はたびたびオペラの作曲を促していました2)。ショパン自身もオペラ鑑賞が大好きで、頻繁に劇場に通っていました。少年時代には姉妹や友達と創作オペラを披露していたくらいです。その彼がどうして頑なにオペラを作曲しなかったのでしょうか?

ショパンはピアノという楽器をこよなく愛していました3)。白鍵と黒鍵に分けられ整然と並べられた鍵盤と10本の指を駆使して得られる音の組み合わせを生涯追及しました。ピアノはオーケストラの各楽器の音域をすべて含み、伴奏も旋律もすべてひとりの奏者がこなせるというほかの楽器にはない可能性を持っています。ショパンがピアノにこだわったのはその万能性に鍵があるように思います。というのも演奏の準備段階で言葉の打ち合わせを必要とするオーケストラ曲、さらに視覚的言語的要素が重要になるオペラでは、イマジネーションを言葉にせずに自由に感じるままに音にするという彼の理想を実現するのには難しいからではないでしょうか。

ショパンの音楽には物語を感じます。背景も季節も登場人物もテーマもさまざまで、ひとつの曲の中でも主人公は一人ではありません。脇役と思われていた人が急にアップされたり背景がアップされたり、それらのタイミングやバランスを演出するのはあまりに複雑で大変です。ピアニストは各俳優の演技をこなし、舞台装置も用意し照明とともに演技にあわせて変化させ、それらすべての監督をしなければなりません。とりわけショパンの作品の中にはその可能性が無限に散りばめられています。それだけにそれらすべてがうまく調和したときに得られる至上の幸福感を味わった人はショパンの音楽の虜になってしまいます。

このアルバムには24の前奏曲を収めました。24の小曲。全24調性を使ってそれぞれ違う調で書かれ、各曲はわずか楽譜4ページ以内でそれぞれが完結しています4)が、全24曲を通して弾くと見事なまでに色彩豊かな全体のまとまりがあります。ショパンは自分の作品に誰かが標題をつけたり内容を擬人化したり言語解説をしたりするのを嫌悪し軽蔑すらしていました。ある音が聞こえたとき連想するシーンはさまざまでも、その音の響きがひとに共通の感情を呼び起こすことがあります。ショパンは言葉というかたちになる前の音を巧みに使って、何かを限定したり具体化することなく彼の音楽に接する人の琴線に触れるような作品を残しました。

この24の前奏曲作品28は、まさにショパンの作品のエッセンス集といえるでしょう。

2013年2月
西水佳代

1)例外としてはピアノ協奏曲2曲(第1番ホ短調作品11・第2番へ短調作品21)、オーケストラ伴奏つきの4曲(モーツァルト・オペラ「ドン・ジョバンニ」のアリア「お手をどうぞ」の主題による変奏曲変ロ長調作品2、ポーランド民謡の主題による幻想曲イ長調作品13、クラコヴィアク風ロンドヘ長調作品14、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調作品22)、チェロソナタ(ト短調作品65)、チェロの小品2曲(序曲と華麗なポロネーズハ長調作品3、大二重奏曲)、バイオリン・チェロ・ピアノ三重奏曲(ト短調作品8)と19曲のピアノ伴奏つきの歌曲です。

2)ショパンは自分の先生に対して深い尊敬の念を抱き謙虚な姿勢を保っていました。先生方も彼を大変可愛がり大切にしていました。ショパンがウィーンで外国デビューを大成功に納めた後、親友宛に書いた手紙の中にその様子が伺われます。

“(…)誰もボクを弟子にとってくれない。ブラヘトカ訳注ジャーナリスト)はボクがこれだけのことをワルシャワで習得したこと以上にびっくりさせられることは他にないって言うんだ。でもボクは、ジヴニ先生訳注ショパンの最初の先生)やエルスナー先生訳注高等学校での先生)の手にかかればどんな間抜けロバでもモノになりますよって答えたんだ。(…)”
(1829年8月29日フェリックス・ヴォジンスキー宛)

一方、エルスナー教授の教育方針はとても賢明なものでした。次に紹介するのは若いショパンが留学中、当時巨匠と称えられたピアニスト・作曲家のカルクブレンナーに気に入られ、3年間の無償のレッスンを受けるように勧められたときにショパン宛にしたためたものです。

“(…)君についてはもちろん、ニデツキについてさえ私の生徒にしようとなんて思ったことはなかった。(…)作曲の教育というものは作法を教えることではない、特に才能のある生徒には。自分自身を磨くことができるよう、自分でそれを見つけ出させるべきで、まだ発見されていなかったものを見つけ出す方法を身につけさせるべきだ。(…)。ピアニストとしてのモーツァルトやベートーヴェンの名声はもう枯れてしまい、彼らのすばらしい古典のピアノ曲も目新しい流行の中で色あせてしまっている。しかしひとつの楽器に縛られない彼らのその他の作品、オペラや歌曲や交響曲は今でも私たちの中で現代の音楽に並んで存在し続けている。(…)”
(1831年11月27日ユーゼフ・エルスナーより)

ここで教授はカルクブレンナーに師事する事についてよく考え直すようにほのめかすだけでなくピアノ曲以外の作曲についても触れています。ショパンが友人の詩にメロディーをつけ伴奏をしてできあがった19曲の歌曲の中でも有名な「乙女の願い」など多数の歌曲の歌詞の作者である詩人ステファン・ヴィトフィツキーは、オペラ作曲を率直に忠告し懇願しています。

“親愛なるフリデリク君よ。僕のことを思い出してくれるかい?素敵な歌をありがとう!僕だけでなく聴いた人みんなすごく気に入ってるんだ。君のお姉さんが歌うのを聴いたら君だって美しいって認めるだろうよ。これはもう絶対ポーランドオペラの作曲家になるべきだね。君がオペラ作曲家になれることも、ポーランド国民作曲家として君の才能を発揮できる場が限りなく広がり並外れの名声を得るだろうことも確信している。(…)こんなことを書いて申し訳ないと思うが、これは君の才能に対する正直な厚意と尊敬の気持ちからの忠告と懇願だということを信じてくれ。(…)”
(1831年11月6日ステファン・ヴィトフィツキより)

ショパンの一番上の姉ルドヴィカはこのようにしたためています。

“この世で一番大切なフリッチュ訳注フリデリックの愛称)へ。今日の手紙の内容であなたの考えと食い違いのあることでいやな思いをしたり気にしたりしないか心配しています。(…)エルスナー先生はあなたがオペラを書くより簡単で取るに足らないコンサートピアニストでピアノ曲の作曲家で名声をほしいままにしているだけでは終わってほしくない、でも自然にたどり着いてあなたの自分らしさを出せる姿を見たいとおっしゃってます。あなたはロッシーニやモーツァルトと肩を並べている。あなたの天賦をもってピアノや演奏活動だけに納まっているべきではない、オペラによってあなたは不朽となると。(…)目下良いものとさらに良いものを感じるままに自分で自分の道を開いていけば、天から授かった才能があなたを導いてくれるだろう。(…)オペラの作品になってはじめてあなたの本性が発揮され、あなたが何者であるか誰にでもわかるようになり、そのおかげとりこになる人も増えることだろう。(…)エルスナー先生はあなたが演奏者として皆に好かれることを喜んでおられますが、それがあなたの最終点ではない、なぜならあなたには稀有な才能があるからとおっしゃってます。ピアノ音楽だけでなくあなたのオペラこそがあなたを第一人者にしてくれるだろうと。ああ親愛なる私のフリッチュ!もしこれらを受け入れないと決断したときにどれだけいやな思いをしなければならないかと思うとあなたがかわいそうで仕方ありません。(…)”
(1831年11月27日ルードヴィカ・ショパンより)

3)ショパンは人生でピアノを教えることに非常に多くの時間を割きました。そしてそれには使命感を持って取り組み、教科書を書こうとまで試みていたようでしたが、結局出版には至りませんでした。ただその草稿が残っており、“鍵盤の構造-メカニズム編”に次のように記しています。

“手の形にここまでも適合する鍵盤の構造を考え出した天才にいくら称賛しても仕切れない。黒鍵は長い指のためにあり、そこが見事な支点の役割を果たすようになっているようなこと以上の発見が他にあるだろうか?軽率にも今までに幾度も鍵盤を平坦にすることについて検討されているが、そんなことをすると手を支える点によって与えられる確信がなくなることになり、シャープやフラットのついた音階で親指を変えるのがとても難しくなるし、3度と6度のレガート、いやレガートで弾くこと全体が難渋極まる事になってしまうだろう。(…)”
(ショパン著“ピアノ奏法”の草稿)

4)

Nr

調性

小節数(頁数)

所要時間(分:秒) 

1

ハ長調

33 (1)

0:49

2

イ短調

23 (1)

2:26

3

ト長調

33 (2)

1:00

4

ホ短調

25 (1)

2:18

5

ニ長調

39 (1)

0:34

6

ロ短調

26 (1)

1:58

7

イ長調

16 (1/3)

1:04

8

嬰へ短調

34 (2 2/3)

2:08

9

ホ長調

12 (1)

1:38

10

嬰ハ短調

18 (1)

0:37

11

ロ長調

27 (1)

0:46

12

嬰ト短調l

81 (3)

1:23

13

嬰ヘ長調

38 (2)

3:53

14

変ホ短調

19 (1)

0:32

15

変ニ長調

89 (3)

6:40

16

変ロ短調

46 (4)

1:16

17

変イ長調

90 (4)

4:32

18

ヘ短調

21 (2)

1:03

19

変ホ長調

71 (3)

1:34

20

ハ短調

13 (2/3)

2:26

21

変ロ長調

59 (2 1/3)

2:20

22

ト短調

41 (2)

0:46

23

ヘ長調

22 (2)

1:16

24

ニ短調

77 (4)

2:52

ショパンの手紙 ポーランド国立ショパン協会所蔵

 http://pl.chopin.nifc.pl/chopin/letters/search 

日本語翻訳:西水佳代

 

 

感謝の気持ちをこめて

このCDとウェブサイトは友人知人の温かい心と励ましのおかげで出来上がりました。

この場を借りてお礼申し上げます。

-私の書いたポーランド語の文章を推敲してくれたアニータに。

-CDジャケット、ウェブサイトのテキストの英訳をしてくれたクバに。

-素敵な写真を撮ってくれたマチェクに。

-録音中穏やかに対応してくれたウーカシュに。

-すばらしい音の鳴るピアノに調律してくれたマルチンに。

-スタジオでいろいろ心遣いしてくれたカロリナに。

-オリジナルなカバーデザインをしてくれたピョトルに。

-いつも応援して待ってくれている日本の友達に。

-私を理解し支えてくれる夫と子供たちに。

...そしてここでは名前を挙げられなかったけど本当にお世話になったみなさまに...

ありがとうございました。    

 

 

 
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